■第31回公演 第37作(プレ公演)
「アドニスの花
~うたかたの恋 前章~
平成24年03月24日(土) 脚本:柊 琉姫
▼ CAST ▼
姫乃:
藤原千方:

領主様:
お嬢様:

村人:
娘:
頭領:
子供:
少女:
柊 琉姫
ブラフマー

神無アスハ
sin

ブラフマー
sin
神無アスハ
柊 琉姫
柊 琉姫



子供:

頭領:
子供
頭領:





子供:

頭領:




子供:
頭領:

子供:
頭領:

子供:
頭領:





子供:

頭領:

子供:
頭領:



子供:
頭領:



子供:

姫乃:




















娘:








村人:

娘:


村人:



娘:




村人:
娘:

村人:


娘:

村人:
娘:
村人:
娘:
村人:
娘:
村人:
娘:
村人:
娘:

序幕 -これは過去の話-

あれ?誰もいないよ・・・?
たしか、ここへ行くように言われたのに・・・
ようやく来たか・・・
だ、誰?
私か?
・・・私は文月
この忍者の里の頭をしている者だ
それにしても不幸な娘だな
よりによって、我らの元に来るなんて・・・
お主、名は何という・・・
・・・
言いたくありません
・・・あいつの入れ知恵か
ふむ・・・
だが、良い心がけだ
これからお前が暮らす世界では、名前なんて必要ない・・・
いや、今までの名前が必要ないと訂正しておこう
・・・
私がここでの名を決める
捨てるべきお前の名を言うがいい
・・・名前を言うなと言われた
く・・・
くははははっ

いやいや、笑ってすまなかったな
本当に素直な娘だと思ってな
名前を口にすることで、体から名前を吐き出す
いわば儀式のようなものだ
それにこの場所には私たち以外に誰もおらぬ
さぁ、かまわず言うがいい
・・・
・・・琉姫です
ルキか・・・ふむ・・・
では、これからは"姫乃"と名乗るがよい
ヒメノ・・・
良いか、姫乃
これからお前は忍びとして生きていくことになる
これまでの生活は全て忘れることだ
己を鍛え、技を磨き、自分自身の信念のみ信じて生きていく
よくわからない・・・
・・・まだ理解する必要はない
ふむ、長旅で疲れておるだろうが
大事な話をお前にしておこう
決して忘れるではないぞ
・・・

姫乃 これからこの場所で生きていくために
「忍びの掟」は絶対に守らなければならないという・・・
この里に引き取られた最初の日に教えられた
あたしが生きていくこの忍びの世界では
「虚構こそ真実として世に伝え、
真実こそ疑念すべき事情として猜疑すべし」だという
姫乃 あれから10年・・・
忍者として未熟なあたしは・・・
これから仕える主人の役に立てるのだろうか・・・
あたしも齢15・・・
じきに里を出る日がやってくる・・・

<Freya劇団>劇団うたかた月夜 第31公演 第37作
「アドニスの花」

この物語はフィクションです。
実在の人物及び団体とは一切関係ありません。
また、オリジナルの設定が存在するため、寛大なお心でご覧ください。

第一幕 -現在 初めてのおつかい-

あたしの名前は姫乃!
え、さっきと姿や名前が違うって?
そりゃそうよ!
変装しているんだもの!
今日は初めてのお使いで里から降りてきたけど・・・
変装しているとはいえドキドキだわ
・・・な~んて
あたしの素顔を知る人なんていないんだから
堂々としていればいいんだよね!
おや・・・
見かけない顔だね
あら
こんにちは、お爺さん
隣の村からお使いで来ました
お~、そうかいそうかい
いつも行商人くらいしか来ないから
狸とか、狐とか
忍者とかが化けて現れたのかと思ったよ
ぎくっ!
い、嫌だなぁ~
たた、狸や狐じゃないですよぉ~!
あは・・・あははははははは・・・
それじゃあ~、私はこれで・・・
・・・それじゃ忍者さんかね?
ぎくり・・・
な、何のことかしらぁ~、あははは・・・
半信半疑で言ってみたんじゃが・・・
どうやら図星のようじゃな
まだまだ甘いのぅ、姫乃さん
なんで私の名前を知ってるの・・・
おじいさん、いったい何者・・・?
俺だ・・
誰だ…?
わからないのか?
まったくわからん・・・
藤原千万だよ
なんだ、お前だったのか!
本当に気づかなかったのか?
わからなかった・・・
・・・暇を持て余した
に、忍者たちの?

村人:
娘:

村人:





娘:




村人:



娘:

村人:


娘:












藤原千方:


悪戯!
悪戯・・・
・・・って、何をやらせるんだ!千万!
はははは!
昔はノリノリでやってたくせにぃ~
まぁ、この俺様の変装に気づくわけないか
仲間内にばれるようじゃ、まだまだ半人前だぜ、姫乃!
まぁ、素顔がばれていたら、お前は死ななければならんがな
ばれたのが俺でよかったな、姫乃!
は、初めてのおつかいなんだ・・・
ちょっとだけ変装が甘かったんだよ!
・・・ぶつぶつぶつぶつ・・・
ところであんた、何でこんなところにいるんだ?
任務はどうしたんだ?
今も任務の最中だよ
万病に効くという薬を探しに近隣の村をまわってたんだが・・・
こそこそしているお前を見かけたから
ちょっと遊んでやろうと思ってな!
この野郎・・・
薬って・・・主が病気なのか?
・・・お前が気にすることじゃないさ
それよりもっと変装の修行をしてこい!
この変装の天才の俺さまがわからないくらいにな!
べ~だ!
言われなくたってばれないようになってやるよ~だ!
千万のばか!あほ!ハゲになっちゃえ!
私の気持ちも知らないで…
ふん、いつか見返してやるんだから・・・
・・・っと、頼まれた火薬を早く買って帰らなきゃ
また親方様に怒られちゃう!
怒られたら千万のせいにしてやろ!
・・・それにしても、万病に効く薬なんて
いったい誰のために探しているんだろう・・・

第二幕 -現在 お嬢様の憂鬱-

ふははははっ
姫乃のビックリした顔は見物だったな~
それにしても、今日が初の任務である「火薬調達」だったとはねぇ~
あの様子だと今頃、お頭に怒られている頃だろうな
さて・・・
かふぇおれお嬢様の薬も手に入れたし、そろそろ戻るか・・・
かふぇおれお嬢様!
こんなところまで来るなど、なんて無茶な・・・
お嬢様:



藤原千方


お嬢様:

藤原千方:



お嬢様:
藤原千方:



お嬢様:




藤原千方:







お嬢様:
藤原千方:

お嬢様:



藤原千方:

お嬢様:

藤原千方:

お嬢様:
藤原千方:

お嬢様:

藤原千方:

お嬢様:


藤原千方:



お嬢様:




藤原千方:

あ、兄様・・・
ふふふ・・・今日は身体の調子が良いのですよ
だから、少しでもいろいろと見ておきたくて
ここまで散歩して来ちゃった・・・
来ちゃった・・・
ではありません!
まだ顔色が優れないじゃないですか
・・・だって、兄様が突然いなくなって
寂しかったんだもん・・・
・・・お嬢様
・・・
そんなこと言っても駄目です
苦い薬でも絶対に飲んでもらいますからね
・・・やっぱり飲まなきゃ駄目・・・なのね
飲まないと駄目です!
わかりましたか!
俺はもう少し効く薬をまた探しに行きますから
しっかり飲むんですよ
・・・そんなに強く言わなくてもわかってます
もう子供じゃないんだから・・・

第三幕 -過去 運命を受け入れる者-

俺がなぜ万病に効くという薬を探しているのか・・・
それは俺が仕える領主様の娘・・・
さっき散歩していた娘なのだが
病に伏せているからだ
俺が領主様にお仕えしたのは10年前
彼女は生まれつき身体が弱かったが、
ここ最近の悪化には著しいものがあった
そんなある日のこと・・・
兄様は運命(さだめ)って信じますか?
忍者が運命なんて信じたら終わりです
信じられるのは己の信念のみ
強いですね、兄様は・・・
私はね・・・
一人一人に運命というものがあるのなら
それを受け入れる覚悟でおります
お嬢様・・・
突然何を・・・
自分の身体のことだからわかってるんですよ
私の命はもう長くないと・・・
何を言い出すかと思えば・・・
悪い冗談はやめていただきたい
・・・兄様ならわかっているはずです
たしかにあなたは亡くなった奥方様に似て病弱ですが・・・
奥方様の分まで生きると誓ったじゃないか
・・・私にとってこれは抗えない運命なの
ゴホゴホッ
それに領主様・・・あなたの父上が万能薬を探している
それさえ飲めば元気になります
薬・・・ですか・・・
そうですね・・・
父が私のためにと用意した薬はきちんと飲まないと・・・
そうですよ!
運命だの何だのとおっしゃる前に、薬を飲んでゆっくり休んでください
俺も里に伝わる丸薬を取りに行ってきます
早めに戻りますから、ゆっくり休んでいるんですよ
ありがとう、兄様・・・
でも・・・もう手遅れなんです
母が・・・亡くなったあの日から・・・
運命の歯車はすでに狂い始めているのです・・・

そうして俺は薬を取りに行ってきた
お嬢様のため・・・
そして、領主様のため・・・
お役に立つことが俺の務めだから
これならお嬢様の病気も治るに違いない
お嬢様・・・早く良くなってくれ
・・・
藤原千方:





姫乃:








藤原千方:
領主様:



藤原千方:


領主様:
藤原千方:

姫乃:



藤原千方:

姫乃:

藤原千方:
姫乃:
藤原千方:

姫乃:







藤原千方:








藤原千方:
領主様:


藤原千方:


領主様:
藤原千方:
領主様:
お、お嬢様!!
おい、しっかりしろ!
お嬢様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

第四幕 -現在 千方の願い-

最近、千万を見かけないな~
忍者の里にも戻ってきてないし・・・
ぶぅ・・・
せっかく私が修行がてら薬探ししてやったというのに・・・
そうだ~
戻ってこないなら、こっちから行っちゃえばいいんだ!
驚くだろうな~千万のやつ~
くひひひひっ!

はぁはぁ・・・
く・・・ごふっ・・・く・・・くっくっく・・・!
これ、で・・・全てが…終わ、る・・!
私も、  娘も・・・!
そして…お前も 未来も なぁ・・・!
もう、黙れ・・・
・・・
・・・黙ってくれ
くは はははははハハハッ!!
・・・ぅ様・・・これが・・・
・・・あなたが望んだ結末だったのか

何をやってんだ・・・?
この人・・・
お前の雇い主じゃないのか・・・?
姫乃か・・・
・・・あぁ、俺が10年間ずっと仕えていたご領主様だ
あんたほどの人が主を殺すなんて・・・
信じられない・・・
・・・姫乃、一つ頼みがある
な、何よ・・・
後生の頼みだ・・・
俺を・・・殺せ・・・
はぁ?
突然何を言いだすんだよ!
なぁ、いったい、何があったんだよ
わかるように話してくれよ!
なぁ、千万!

第五幕 -過去 間違った絆-

・・・
丸薬を持っていた矢先・・・
・・・
お嬢様は息を引き取った・・・
だが、俺は知ってしまったんだ
お嬢様が日に日に弱っていった原因が・・・
領主様が・・・実の父親が・・・
薬と偽って毒を盛っていたなんて・・・

お嬢様に毒なんて正気ですか!!
…私は至って正気だ
それに、あれは毒などではない
私達・・・家族をつなぐ万能薬だ
家族を繋ぐだと・・・
奥方様をご病気で亡くし、忘れ形見であるお嬢様にまで手をかけて・・・
いったい何を繋ぐというんです!
来世でも、一緒にいられるための…家族の、絆だ
何を馬鹿なことを・・・
貴様に…
領主様:




藤原千方:
領主様:





藤原千方:





お嬢様:


藤原千方:
何が分かる!
妻が流行り病で先立たれ!
悲しむ私に、あやつは優しく寄り添ってくれていた・・・!
私にはもう娘しかおらん・・・
娘の成長が、これからの楽しみとなったのに・・・
なら、なぜ毒など盛ったのですか!?
娘は、しのびである貴様に好意を寄せているではないか・・・!
私の飼い犬でしかない、お前をだぞ・・・?
渡してなるものか・・・
私にとって、あいつだけが残された全てなのだ
妻に・・・成長していくあの娘はまさに妻と瓜二つなのだ
ずっと一緒にいることを望んで何が悪い!
・・・本気で言っているのか
お嬢様が俺にそんな感情を抱いてたとしても、俺には関係のない話だ
俺とお嬢様とでは生きる世界が違いすぎる・・
それに・・・
お嬢様が亡くなる直前、おっしゃってましたよ・・・

兄様…
逝く前に・・・
私のお願いとわがまま・・・聞いてくださいますか・・・
逝くなどと言わないでください・・・
これから先もどのようななわがままを聞いてあげますから・・・
お嬢様:


藤原千方:



お嬢様:






藤原千方:



お嬢様:





藤原千方:



藤原千方:
領主様:






藤原千方:


領主様:

藤原千方:
領主様:

ありがとう・・・
こ、この先・・・何があっても・・・父を・・・
兄様の主である父を守ってくださいますか…?
無論です!
それにお嬢様だって
いつもそばでいて・・・
守ってあげます
うふふ・・・頼もしいですね
それと最後に・・・
兄様の・・・
素顔を・・・見たいな・・・
駄目、だよね・・・
忍者は素顔は見・・・せちゃいけないって…
いっつも兄様は言ってたもん・・・ね…
・・・お嬢
1度しか・・・見せませんよ
・・・これが俺の素顔だ
あまりのイケメンで驚いただろう
・・・やっぱり
思い描いてたとおり・・・優しい顔してる・・・
わたしの・・・
わたしの・・・大好きなにいさま…
父を・・・
…すくって…あげて…
お嬢様・・・?
・・・・・!
おじょうさまあぁぁぁぁぁぁぁ!

そう言って・・・お嬢様は息を引き取ったんです
…くっくっく・・・
くはははは・・・
クハハハハハハッ!!
即興にしては、なかなか上出来ではないか?
だが…
そのような戯言、狂言に!!
この私が、騙されるとでも思うたか!!
・・・戯言だと?
愛する娘の・・・今際の言葉でさえ信じられねぇのか!
そこまで気が狂ってしまったか!?
同じことを二度、言わせるつもりか?
私は至って正気だと、言っただろう?
貴様・・・
愛した妻は死んだ…
愛する娘も逝った…
あとは、貴様さえ葬れば・・・!
藤原千方:
領主様:




藤原千方:




領主様:


藤原千方:



領主様:

藤原千方:






領主様:





姫乃:



藤原千方:


姫乃:


藤原千方:


姫乃:
藤原千方:

姫乃:

藤原千方:


姫乃:
藤原千方:




姫乃:


藤原千方:



姫乃:






藤原千方:


姫乃:


藤原千方:
姫乃:


藤原千方:
姫乃:

藤原千方:


姫乃:



藤原千方:
姫乃:


藤原千方:




姫乃:
藤原千方:








姫乃:
藤原千方:

紙一重で避けたつもりだったが・・・
クハハハハッ!!
その程度の腕で、私を護衛していただと?
片腹痛いわ!!
…そうだ、貴様などもっと早い段階で葬っておれば
娘に薬と偽って毒など飲ますこともなかったろうに
薬・・・
まさかお嬢様は全てを知っていて・・・飲んでたのか!?
だから、父を救ってなどという願いを・・・
ならば、俺がやるべきことは1つ
領主様を狂気からお救いするために・・・
忍びが素顔を晒すなど・・・
気でも触れたか?二流
くっくっく…愚かだなぁ?
領主様・・・
我ら忍びの者にとって素顔を晒すことは
自らの死を意味すると昔お伝えしましたね
実はもう一つ意味があるんですよ・・・
ほほう…?
許す、言うてみよ
これは決意であり、忍びの掟です
「素顔を見せた相手は確実に殺せ」
俺はお嬢様の願いを叶えるために・・・
領主様をお救いするために・・・
ご乱心されている貴様を始末する
逃げても・・・地の果てまで追いかけて殺す
ご覚悟・・・なさいませ・・・
・・・・
口だけは達者な輩め
返り討ちにしてくれるわ!!

第六幕 -現在 掟に縛られし者-

・・・
おやが・・・子を・・・
そんなことが・・・
あったなんて・・・
おやが子に手をかけるなど許せるものか・・・
だが、お嬢様との最後の約束は領主様を守ること
狂ってしまったあの方を守るには・・・もう・・・
・・・殺すしかないと
だからって・・・
なぜあんたが死ななければならないんだ!
・・・忍びの掟は絶対だ
俺たちが仕えた主を守るのが役目であり、それが掟だ
だが、結果的に俺は主を殺したんだ
千方・・・
なぁ、姫乃・・・
お前は運命(さだめ)って信じるか?
忍者は己の信念のみ信じる・・・
そう教えてくれたのはあんたじゃないか・・・
ふっ、俺もそう思ってたよ
だが、お嬢様を亡くして、領主様を殺した・・・
これが俺の信念だと思うか?
・・・
そして、俺の信念は・・・
「忍びの掟はいついかなることがあっても絶対に守る」ことだ
一時の感情に負け、お嬢に素顔を見せてしまった・・・
そしてご領主様に手をかけた・・・
掟をやぶったものは制裁を受けなければならない
くっ!
・・・だから、あんたは死を選ぶのか?
そんなの間違ってる!
・・・武器を取れ・・・姫乃
そして、掟どおり
同胞たるお前が・・・
俺を始末するんだ
い、嫌だ!
そりゃ、あんたは嫌な奴だけど・・・
今は感謝してるんだ・・・
親に売られそうになったあたしを・・・
あんたは救ってくれた・・・
そして、今があるんだ・・・
だから!
お前がそれを遂行しないというなら
俺は「掟」を遂行しないお前を・・・「掟」どおり殺すだけだ・・・
死にたくなければ・・・俺と戦え!!
いやだ!
やめてよ!
戦いたくない!
ちっ逃げ足は上忍クラスだな・・・
ぐ!
もう・・・やめてよ・・・
千方・・・
炎など効かぬは!
火、火が・・・
しかもうごけない・・・
とどめだ・・・
姫乃・・・
殺されたくなければ俺を殺せ・・・!
やめてぇぇぇぇぇぇ!
せ・・・
千方!
な、なんで・・・
強くなったな・・・姫乃・・・
・・・最後の雷術は
・・・避けなかったじゃないか
どうして・・・
違う・・・避けれなかったんだ・・・
なぁ、姫乃
これが俺の
・・・
運命だったんだよ
う・・・うん・・めい・・・?
人は死を覚悟したとき・・・
それを「運命」だと割りって受け入れるか・・・
それとも、あがき続けるだけの・・・
「希望」を見出せるかだと思う・・・
俺には希望なんて見えてなかった・・・
だから、お前が悔いることはない・・・
それが忍者として生き続ける者の運命・・・いや宿命なんだ・・・
お前に・・・頼みがある・・・
この俺を・・・
・・・
頼んだぞ、姫乃・・・
お嬢様・・・
俺もそばに逝くよ・・・
向こうの・・・・
世界でも・・・
約束どおり・・・
ずっと・・・
藤原千方:

姫乃:
藤原千方:

姫乃:






















姫乃:


そばで・・・
守っ・・・て・・・
千・・・方・・
やる・・・か・・ら・・・な・・・
・・・
・・・・・・
・・・
これで本当に良かったのかな・・・
忍びの掟・・・とはいえ・・・
わかっていても・・・切ないよ・・・
・・・悲しいよ
でも・・・
・・・幸せそうな顔してる
さようなら・・・
千方・・・
里に戻ったあたしは・・・
掟に背いた千方を始末したと忍者長に報告をした
これは彼が残した今際の言葉通りの行動であり
罪状は・・・
「主の家族を私利私欲のために利用し、あげく始末に至った」である
私には真実はわかっている・・・でも・・・
「虚構こそ真実として世に伝え、真実こそ疑念すべき事情として猜疑すべし」
・・・彼は最後の最後まで、忍びの「掟」を守ろうとしたんだ
あたしは掟破りという大罪を犯した仲間を始末したことで
里のみんなから賞賛されたんだ・・・

第七幕 -未来 アドニスの花-

・・・幸せに過ごしているかい、千方
今日ね・・・
私が仕える主様に謀反を企ててた家臣から
主様を守ったんだよ
姫乃:




姫乃:











頭領:
姫乃:

頭領:
姫乃:
頭領:



姫乃:
頭領:

姫乃:
頭領:
私、また強くなったよ・・・
誰かを守れるくらい・・・
強くなったよ・・・
千方・・・

あの出来事から5年の歳月が過ぎた
私は今でもあいつが眠る場所へ行っている
今にして思えば、ご領主の娘を亡くした時点で
あいつはもう「希望」を失っていたのかもしれない
・・・永遠に叶うことのない感情を持ちながら
そばで仕えることが唯一の幸せだった一人の忍者
でも今は・・・
永遠にこの場所で一緒なんだ
この場所は、あいつが愛した娘とその家族が眠る墓所
これはあいつが最後に望んだ、たった1つの希望・・・
掟などに縛られぬ世界でいつまでも一緒に過ごしてくれ・・・
こんなところにも綺麗な花が咲くんだな・・・
これは・・・
その声は・・・
親方様・・・?
あやつの墓か
あ、いえ・・これは・・・
毎年、この日に姿を消しておったから気にはしていたが・・
・・・掟とはいえ、お前も十分苦しんだだろう
あまり、背負いすぎるな
あやつも、それを願っての結末なのだろう・・・
千方の・・・願い・・・?
…して、この花は…
アネモネか。お主が添えたのか?
いえ・・・自生したようです
ふむ…
頭領:
姫乃:
頭領:



姫乃:
頭領:

姫乃:

頭領:
姫乃:
頭領:


姫乃:

頭領:

姫乃:






姫乃:





姫乃:

少女:




姫乃:
少女:
姫乃:

少女:

姫乃:
少女:
姫乃:

さしずめアドニスの花、という訳か
アドニス?
あぁ、神話の話だ
わしも詳しくは知らぬが、嫉妬心からアドニスという青年が殺されて・・・
アドニスの血からアネモネの花が咲いたと云われている
だから、花言葉は儚い言葉ばかりなのだ
花言葉・・・?
「はかない夢」「はかない恋」「薄れゆく希望」
そして「嫉妬の為の無実の犠牲」・・・
無実の犠牲・・・
まるであいつのためにあるような花言葉ですね・・・
…姫乃よ
はい
お主にやってもらいたい任務がある
お主にしか出来ぬ仕事だ
…やってくれるな?
・・・私は忍びですから、親方様の命令は絶対です
それが私の生きるこの世界の「掟」なのですから
うむ。それでは仔細は里にて話そう
先に行っておるぞ
わかりました
千方・・・・・・私はここで生きていくよ
掟に縛られたがゆえに失った命があるとわかっていても・・・
私、がんばるから・・・
泣いてばかりじゃだめだから・・・
バイバイ・・・また来るね

だが、あたしは・・・
これから受ける任務で・・・
ある少女に素顔を見られてしまう・・・

終幕 -姫乃、そして・・・-

うぅ・・・
まさかこんなところで・・・
まぁ、大変だわ!人が倒れてる!
・・・!
まだ息があるわ!
手当てしなくちゃ!
とりあえず顔の傷を・・・
・・・うぅ
あ、気がついた?
え・・・、私は・・・
め、めかくしが・・・
大丈夫よ、顔の傷はそんなにひどくないから
安心して
!・・・
それにしてもいったい何があったの?
私は少女に命を救われた・・・でも・・・
素顔を見られてしまった・・・
忍びの「掟」どおり・・・彼女を殺さなければならないのか・・・
助けてくれた人を・・・

7周年記念公演「うたかたの恋」へ続きます